未来縁人

守ろう!地域の宝 山陰の伝統芸能

「TSKグループ伝統芸能助成金制度」について

TSKさんいん中央テレビでは、2010年から伝統芸能の振興を目的に「地域伝統芸能振興助成金制度」を設け、山陰両県の伝統芸能を活動に取り組む団体を支援してまいりました。2018年度からは、TSKグループ全体の取り組みに拡充し「TSKグループ伝統芸能助成金制度」としてリニューアル、これまでにも増して山陰の伝統芸能を応援してまいります。

2024年度「TSKグループ伝統芸能助成金制度」助成団体発表

2024年度の助成団体を選考する審査委員会を開催し、下記の通り両県あわせて21団体への助成が決定しました。

2024年度 TSKグループ伝統芸能助成金制度 助成対象団体一覧

これまでの助成団体

これまでの助成団体をご覧になるには、下記をクリックしてください。
※2011年度~2017年度は、TSK地域伝統芸能振興助成金による助成団体。

助成団体の活動報告

室町時代から続く深夜の神事 嫐(うわなり)神事

嫐(うわなり)神事は、鳥取県大山町宮内の高杉神社で室町時代から続く神事で、旧暦の9月15日の深夜に営まれます。4年に一度の閏年にあたる2020年は、本神事が10月31日に営まれました。

嫐とは、女に男が挟まれた字を書いて「うわなり」と読み、平安時代には後妻や嫉妬の意味をもつ言葉として用いられたということです。
中世から江戸時代にかけては、前妻が後妻の家を打ち荒らしたり、それに反撃を加える「うわなりうち」という習わしがあり、江戸時代には歌舞伎でも演じられました。「嫐」は、古くから男性をめぐる女性のいざこざを表しているようです。嫐神事は、この習わしが神事化したものといいます。

この神事の起源は、476年に郷の人々に災いが続き、その原因が郷に滞在した貴人の正妻に対する、第二、第三婦人による嫉妬の祟りによるもので、社殿を建てて神事を行ったところ、災いが和らぎ穏やかに暮らせるようになったと伝えられています。

神事では、氏子の中から選ばれた3人が、主役の「打神」を務めます。
早朝に海で禊をした打神は、塩草などを持ち帰って社殿を清めます。夜には集落の街灯が消されて、提灯と月明かりを頼りに神事が進められます。
そして深夜になり、神前のお供を打神が食べると、神霊が憑依すると言われています。
その後も様々な手順を経て、最後には茅を束ねて作った打ち杖(うちじろ)で打ちあいます。
神事が終わると参拝者にお供が配られ、これをいただくと無病息災になるといわれています。
嫐神事は、古来より続く貴重な神事であることから、県無形民俗文化財に指定されています。

高杉神社の氏子は103人。長きにわたり続く神事を次世代に受け継ごうと、地域で協力して取り組まれています。
TSKグループ伝統芸能助成金では、神事に使用する調度品が新調されました。

高杉神社の押村宮司は、「数百年もの昔から継承されてきた伝統ある信仰行事を、氏子と地域が一体となり後世に伝えていくことが大切で、使命だと思います。」と話しています。
また嫐神事保存会の馬田会長は、「コロナ禍の中で、関係者が状況を注視しながらも、神事が無事開催されたことに感謝です。集落が一丸となり、この神事を後世に伝えられるように活動したいです。」と意気込みを語っています。

写真提供/嫐神事保存会


地域の偉人称える甚左衛門太鼓 金城中学校3年生が躍動の演奏!

地域の偉人として知られる岡本甚左衛門を称える甚左衛門太鼓が、浜田市立金城中学校3年生約20人によって、浜田市金城町のふれあいジムかなぎで11月7日に演奏されました。
江戸時代に、金城の農地開拓に尽力した岡本甚左衛門の功績を称えようと、40年程前に始まった甚左衛門太鼓。10年ほど前からは同中学3年生が総合的な学習の時間を活用して練習に取り組み、学習発表会で演奏することで、若い世代に受け継がれています。
奏者や指導者の高齢化が進む中、地域で指導者のチームが結成され、生徒たちの指導にあたっています。

甚左衛門太鼓

発表会では、2チームに分かれた生徒たちが、約10分間ずつ力強い響きで演奏しました。
開拓時の堤の完成や水を引き込む際の喜びなどを、軽快なリズムや動きで表現、リズムやテンポが重なり合うよう、生徒たちは週1回のペースで約2か月間の練習を重ねてきました。
TSKグループ伝統芸能助成金で新調された法被は、背中にあしらわれたロゴのデザインも生徒たちが考えるなど、随所に思いが込められています。

甚左衛門太鼓法被を着た後ろ姿

岡本甚左衛門は、江戸時代に私財を投じて、現在の浜田市金城町七条の農地開拓に尽力した人物で、島村抱月、能海寛と並び金城の三偉人として語り継がれています。


宅野子ども神楽保存会 ~270年の伝統を未来へ~

江戸時代後期から約27年継承されている宅野子ども神楽。現在では地区の小中学生を中心として宅野子ども神楽保存会のメンバーとなり、笛や太鼓などの奏楽から舞まで全てを子どもたちが担っていて、大田市の無形民俗文化財にも登録されています。

毎年2月に開催される発表会は子どもたちの晴れ舞台、今年の発表会では小学1年生から中学3年生まで約30人が、鬼、恵比須、大蛇など10演目を披露。鮮やかな衣装をまとった勇壮華麗な舞で、約150人の観客を魅了しました。なかでも獅子やキツネなどの演目では、観客も巻き込んで会場は大賑いです。

石見神楽の花形とも言える大蛇で、スサノオを演じた中学3年生の浅原健太さんは、今回が子ども神楽の卒業公演。
「貴重な神楽の伝統がこれからも続いてほしい、今後も何らかの形で携わりたい」と神楽への思いを語ってくれました。

宅野子ども神楽保存会のメンバーは、毎月2回の練習を重ね、年数回の公演に備えています。

正月には獅子舞を演じながら地区の各家庭を訪問し、無病息災を祈願。また老人ホームでの公演も、お年寄りに喜ばれ ています。

少子高齢化により伝統芸能の継承が危ぶまれていますが、未来を担う子供たちによる神楽は、まちづくりのシンボル的存在となっています。

TSK グループ伝統芸能助成金は、神楽の衣装や面などの購入に充てられました。


子供安来節教室「すずめの学校」 ~観光客のおもてなしに一役~

子供安来節教室「すずめの学校」は、次世代を担う子供たちに正しい安来節を伝え、伝統の継承と担い手の裾野を広げ ようと活動しています。現在のメンバーは小学生から社会人の13人で、安来節の唄、三味線、鼓、銭太鼓、そして踊りを練習し、発表会や老人会のイベントなどの公演に備えています。

また地域に貢献する活動として、毎週日曜日の午前に JR の乗客に向け、安来節やどじょうすくい踊りを披露する「安来駅どじょうすくい出迎え隊」に参加。本場の唄と踊りで、旅の雰囲気を盛り上げています。
この活動は、このたび国土交通省中国運輸局の「中国地方観光振興アワード」に選ばれ、踊りの他に写真撮影や乗客の荷物を運ぶなどのおもてなしが、「安来を代表する観光地、足立美術館や月山富田城跡の玄関口にふさわしい活動」と称えられました。

安来駅で行われた表彰式には、すすめの学校のメンバーも参加し、詰めかけた報道陣や関係者を前に、練習の成果を披露。唄と踊りを担当した小学5年生の澤田氣くんは、「安来節のすべてが好き、みんなが笑顔になれるよう活動を続けたい」と意欲満々です。

少子高齢化にともない安来節の担い手は減少しつつありますが、すすめの学校のメンバーは、どんな役でも担えるように、安来節を構成する唄、三味線、鼓、銭太鼓、踊りなど一通りを練習、安来節の資格試験にも挑戦しています。TSK グループ伝統芸能助成金では、衣装などが作られました。